今回は明治以降編です。
前回の鎌倉時代~江戸時代編はこちらです。
明治以降の日本の建築の流れ
明治時代
擬洋風建築
鎖国が終わると、西洋の建築様式や材料(鉄、ガラス、コンクリート)が日本に入ってきました。新しい時代を象徴するように、西洋館が建てられるようになります。都市部では「お雇い外国人」と呼ばれる技術者の設計で建物(富岡製糸場など)が造られましたが、地方では日本の大工が見よう見まねで西洋風の建物を造りました。このような建物を擬洋風(ぎようふう)建築といいます。
擬洋風建築の代表的な建築物は旧開智(きゅうかいち)学校です。
西洋建築の本格化
1873年に工部大学校(東京大学工学部の前身)が開校し、西洋建築が本格化します。1877年にはイギリス人建築家のジョサイア・コンドルが工部大学校で教鞭をとります。ジョサイア・コンドルの生徒には辰野金吾(たつの きんご)、片山東熊(かたやま とうくま)曽禰達蔵(そね たつぞう)がいます。
- ジョサイア・コンドル:ニコライ堂、鹿鳴館
- 辰野金吾:日本銀行、東京駅駅舎
- 片山東熊:迎賓館赤坂離宮
- 曽禰達蔵:慶應義塾大学図書館
大正時代
中廊下型住宅
この当時、中流家庭では中廊下(なかろうか)型式住宅が普及しました。廊下を挟んで南側は家族の部屋、北側は台所やお風呂などの水回り・使用人の部屋を配置しました。家族のプライバシーを確保した造りになっています。玄関の横には、西洋風の応接室も設けました。
鉄筋コンクリート造の主流化
1923年に起こった関東大震災で、レンガ造りの建物は崩壊し、木造の一般住宅は燃えました。そこで、耐震・耐火にすぐれた鉄筋コンクリート造が普及していきました。
関東大震災後の住宅供給のため、同潤会(どうじゅんかい)という財団が設立され、鉄筋コンクリート造の同潤会アパートを東京・横浜に建設しました。
この時代の代表的な建築物に旧帝国ホテルがあります。旧帝国ホテルは鉄筋コンクリートおよび煉瓦コンクリート造でフランク・ロイド・ライトが設計しました。
フランク・ロイド・ライトについてはこちらをご覧ください
昭和以降
昭和初期
フランス人建築家のル・コルビュジエの弟子の前川國男(まえかわ くにお)、坂倉準三(さかくら じゅんぞう)はパリのル・コルビュジエ事務所で働き、建築を学びます。
- ル・コルビュジエ:国立西洋美術館、サヴォア邸、ユニテ・ダビタシオン、ロンシャン礼拝堂
- 前川國男:東京文化会館
- 坂倉準三:パリ万博日本館
同じ事務所で働いていた女性デザイナーのシャルロット・ペリアンは輸出工芸指導の装飾美術顧問として、1940年に日本へ招かれます。
シャルロット・ペリアンと交流のあった柳宗悦(やなぎ むねよし)は「用の美」を啓発する民藝運動を展開します。
また、1933年に来日したドイツ人建築家のブルーノ・タウトは桂離宮などを評価した本「日本美再発見」を著し、日本文化の再評価に貢献します。
戦後
住宅大量建設期
戦後の住宅供給のため、1955年に日本住宅公団(現・都市再生機構)が設立されました。
この時代「公室と私室」の分離が重視されるようになります。建築学者の西山夘三(にしやま うぞう)が提唱した食べる場所と寝る場所を分ける食寝分離(しょくしんぶんり)の考えを取り入れ、DK(ダイニングキッチン)を採用したDK型住宅がたくさん建てられました。
耐震基準
1981年と2000年に建築基準法が改正されています。
1981年の改正は1978年の宮城県沖地震、 2000年の改正は1995年の阪神・淡路大震災が大きく影響しています。
1981年以降のものは「新耐震基準」、それ以前のものは「旧耐震基準」と呼ばれます。
新耐震基準 :震度6~7の地震でも倒壊しない
旧耐震基準 :震度5程度の地震に耐える
2000年の改正では、木造住宅の耐震性が見直されました。
建築家
日本だけでなく海外でも活躍する日本人の建築家はたくさんいます。しかし、インテリアコーディネーター試験においては、現代の建築家に関する問題の出題頻度はそれほど多くありません。
時間があれば建築家名と代表的な建築物を覚えるのはいいと思いますが、時間がない場合は、地元の有名な建築物や建築家など、覚えられるものだけでも覚えるようにしてください。少しでも覚えておくと、消去法で答えにたどり着ける可能性が上がります。
- 丹下健三(たんげ けんぞう):国立屋内総合競技場(国立代々木競技場)、新東京都庁
- 菊竹清訓(きくたけ きよのり): スカイハウス、銀座テアトルビル
- 磯崎新(いそざき あらた): つくばセンタービル
- 黒川紀章(くろかわ きしょう):中銀カプセルタワービル
- 原広司(はら ひろし):梅田スカイビル、京都駅ビル
- 谷口吉生(たにぐち よしお):ニューヨーク近代美術館(MoMA)
- 安藤忠雄(あんどう ただお):住吉の長屋
- 伊東豊雄(いとう とよお):せんだいメディアテーク
- 隈研吾(くま けんご):サントリー美術館、国立競技場
- 坂茂(ばん しげる):富士山世界遺産センター、紙の教会
- 妹島和世(せじま かずよ)と西沢立衛(にしざわ りゅうえ)のユニットSANAA:金沢21世紀美術館